平成23年 神奈川県歯科技工士会横須賀支部冬季学術講演会

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平成23年 ㈳神奈川県歯科技工士会横須賀支部冬季学術講演会
 

  CIMG1380.JPG1月30日(日),横須賀市西逸見町のウェルシティ市民プラザ 生涯学習センター第1学習室に於いて標記学術講演会が開催された.講師は株式会社O.D.A.代表取締役である小倉 眞氏(日技認定講師)で演題は「若い技工士に伝えたいこと」.小春日和の中,会場には若い歯科技工士,さほど若くもない歯科技工士らが大勢駆け付けた.八十嶋秀幸支部長の開会の挨拶,県技専務理事の今牧 謙氏の挨拶の後,長瀬隆也副支部長の司会進行により講演が始まった.
 

 氏の主催される技工所の人員は3名で,自費率が8割を占める中堅ラボとのことである.プロビジョナルによる形態と生体との経過観察の後にシステマチックに補綴修復を行うことの出来る歯科技工物を提供しているとのことであった.「まずは臼歯部の咬合を修復し,安定しないままに患者の希望に沿う形で前歯部の治療・修復を始めてしまうと,必ず前歯の修復物にトラブルが生じてしまう.オクルージョン(中心位における)を確立し,顎の動きを制限してはならない.」等の基本的な知識の再確認を促された.また,試適やセット(装着)には積極的に歯科医院の患者の許へ立会いに伺った方が良いと推奨されておられました.
 咬合平面が斜めに傾いた状態になってしまった失敗症例に関しても,包み隠すことなくその原因等を分析し,写真の撮り方,添付写真の解析に誤りがあった事などの反省を踏まえて解説された.小倉先生ご本人の名誉のために言いますが,この症例を修正し直した口腔内の症例写真は,それはそれは素晴らしい修復物が入っていました事を申し添えます.
 

 補綴完了後に,失われた歯間乳頭の再生する発現率が,接触点最根尖側端から歯間部歯槽骨頂までの距離が5㎜以下であれば100%であり,同じく5㎜では98%,6㎜では56%,7㎜以上になると27%に下がるという「Tarnowの法則」等の豆知識も加えて解説され,また,連結したBr.のワックスを1歯毎に分割する際に,魚釣り用の鋼線をほぐして1本に分離したものを使用すれば最小限の厚みで分割することができる...などなど,職人らしいナイスヒントを惜しみなく披瀝して下さいました.また上顎3-|-3前歯部を被覆するシグメンタルスプリントを日常頻繁に製作されているとのことであった.
歯型彫刻に関しては,立体を認識し,再現するための訓練などが我々に不足しているという事などを指摘され,「溝と呼べるのは主溝のみであり,他の形状は『うねり』である.副溝と呼ばれるものは『うねり』と『うねり』とが交わったものである.」との解説に,自分の認識を新たにさせられた.
 
 後半のデモンストレーションに先駆け,アドビ社のフォトショップを使った色調の補正法に関しても説明して下さった.歯肉色(赤色)が取り囲んでいる条件では色調評価を誤りやすい.天然歯の外形画像をモニター上で切り取り,無彩色の背景(グレー色)の上に置いてシェードガイドと対比・比較する事によって錯覚や錯視に惑わされることなく正しく評価出来る事を具体的に解説された.氏の技工所では社員全員がこの技術を習得されているとの事です.
1383.jpg デモンストレーションでは,松風セラマージュを用いた左上6番大臼歯の築盛(築造)と研磨の手法を披露された.氏の手許をスクリーンに映し出し,段階ごとの細かなアドバイスが盛りだくさんで若い技工士には大変に参考になったのではないかと感じられた.
 

 奥様の勧めで一念発起して26歳で開業.様々な勉強を開始されたのが35歳頃,にしむら塾2期生入塾が38歳.46歳(昨年)にてクワタカレッジ西村好美コースの3ヶ月のご経験のお話などなど,人間としてとても興味深いものがありました.半生を顧みて,その時々の反省,氏の技工士としての26年間の経験から,若い方々に「自分がどうなりたいのか」そして「何が足りないのか」を把握し,チャンスを逃さず掴むための心構え等をお話された.近年になりあらためて中学校の同級生らとバイクの趣味に復帰されたことなど,活きいきとご自身を語られました.特に若い技工士に対しては「ドクターに対しても適切な指示・助言の出来る歯科技工士になって欲しい」とエールを贈られた.藤井 均学術担当理事の閉会の言葉で講演会は締め括られた.
 

 4時間にもわたる氏の実践的かつ情熱あふれるご講演に,今後の特に若い歯科技工士の目指すべき"歯科技工士像"の或るモデルを提示された様な気がしました.今後の小倉先生の活動にも注目したいと思います.
講演終了後ひとりおもてに出ると,街は一面薄っすらと雪化粧されていました.
 

報告/神奈川県歯科技工士会常務理事  早川浩生
 

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